ふしぎな鈴


   ふしぎな鈴44


みごとに咲いた桜の花の下で、
「この鈴を大切にするのだよ」
といって、娘に鈴をわたしてい
る光景が浮かんできたのです。



それだけではありません。
娘とすごした鎌倉の様子が、走
馬灯のように頭の中にうかんで
きたのです。



「おとうさま、おとうさまー」
とよぶ娘の声まで、校長先生は
はっきり思い出しました。
「やはり、かなは私の娘だった
のだ」
校長先生はそう確信しました。



「しかし、かなはまだ幼い。
遠い昔のことを話したところで、
どうなるものでもない。
かなもいつか私のことを知るだ
ろう。その日がくるまで、そっ
としておこう」
校長先生はそう心に決めました。


             つづく



    前回の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100726#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100610#p1



「ふしぎな鈴」は、みほようこ
三冊目の童話。
2005年9月、「鳥影社」から
発行されました。









リーン・リーン・リーン。…
五百年の時をへて、心やさしい小
桜姫と現代の少女をむすぶ、美し
い鈴の音が聞こえる。
信州諏訪の「風の神様」が、そっ
と教えてくれたお話。