昭和50年代の歌8

病む姑に二十五年仕へきて
    六十路迎へしと友しみじみと言ふ




血圧の高き姉のためこの夏も
    白き花咲くドクダミを採りて干したり




なにごとも善意に解して生きゆかむ
    今日の日記にそれのみ記しぬ




大平の人住まぬ家の藪に
    ヂギタリスの花風に揺れおり




明日蒔かむ三色スミレの小さき種を
    障子紙濡らしてその上にひたす




標高の高まるにつれて白樺の
    木肌白じら秋日に冴え来ぬ




真向へる縞枯山は秋の日に
    白白縞なし静もりており




見渡す限りキャベツ畑つづく野辺山高原
    収穫する人等点てんと見ゆ




初老の吾等体形の醜さを嘆きつつ 
    多喜示作の「裸婦像」前に立つ




玉城先生の短歌講演をきき
    書道展を見心豊かに一日過ごしぬ




温かき友の言葉に励まされ
    八つ手の花に群がる蜂を見ており




    おことわり

   「おり」の旧かなが入力できないので、
    新かなになっております。