福寿草になった少女


  福寿草になった少女2


「長者さまも奥さまも、あんなにこどもが好きな
のに、なぜこどもが授からないのじゃろ。早くこ
どもが授かると良いのぅ」
長者夫婦は、こどもたちだけでなく、村の人々か
らもしたわれていました。



「私たちには、もうこどもが授からないのかしら」
「いや、そんなことはない。二人で一心にお願いす
れば、明神さまが元気なこどもを授けてくださるに
ちがいない」
二人は、いつかこどもが授かると信じ、毎日明神さ
まに、こどものことをお願いしていました。
しかし、何年たっても、こどもは授かりませんでし
た。



二十年が過ぎました。
二人とも、四十すぎになりました。
「もう年だから、こどもはむりね」
「毎日こどものことをお願いしているのに、なぜ明
神さまは、わしらの願いを聞いてくれないのじゃろ」
二人は、こどものことを、あきらめかけていました。



そんな春のある日。
庭の桜が満開になりました。
「今年の桜は、みごとじゃのぅ」
「そうねぇ。こんな美しい桜は、ひさしぶりね」
二人は、桜の花にみとれていました。



すると・・・・・・。
お手伝いの人があわてて長者をよびにきました。
「だんなさま、だんなさま。た、大変です」
「何じゃ。そうぞうしい」


                   つづく


童話「福寿草になった少女」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収録され
ています。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

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