福寿草になった少女


福寿草になった少女3


「だんなさま、門の所に赤ちゃんが・・・・・
赤ちゃんがいます。
「何?赤ちゃんがいると・・・・・・」
「はい、赤ちゃんがいます」
長者と妻は、いそいで門の方へ走って行きま
した。



門のそばには、桃色の布で包まれた赤ちゃん
がおいてありました。
白い産着をきた、生後一ヶ月くらいの女の子
でした。
「この子のこと、どうかよろしくお願いします」
そう書かれた手紙と守り袋が、女の子のそばに
置いてありました。



長者が守り袋をとりあげると、「リーン・リー
ン」と、良い音がしました。
中に鈴が入っているようです。
女の子のおかあさんが、お守りのつもりで、鈴
をおいていったのでしょうか。
長者が袋をあけてみると、中に黄金色の鈴が入
っていました。
「おや?鈴に紋がついている。この紋はたしか
・・・・・・梶の紋。梶の紋といえば、明神さ
まの紋じゃが。この子は、明神さまに関係ある
人のこどもなのじゃろか」



「まさか・・・・・・」
おくさんも鈴を手にとり、ふってみました。
「リーン・リーン・リーン」
清らかな音色が、あたりにひびきました。
「なんで、こんなかわいい子を、おきざりにす
るのじゃ」
「きっとわけがあったのでしょう。こんなかわ
いい子ですもの、おかあさんだって、てばなし
たくなかったでしょうに」



かわいいこどもをてばなすなんて、こどもの授
からない夫婦には、考えられないことでした。
「それにしても、かわいい子じゃのぅ」
長者はなれない手つきで、そっと女の子をだき
あげました。

           
                  つづく  



童話「福寿草になった少女」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収録され
ています。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

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