童話「守屋山に黄金色の花が咲いた」


童話「守屋山に黄金色の花が咲いた」4


わしの後をついておいで」
その声は、いつか聞いたことのある明神さまの声
でした。
少女は声のするほうにむかって歩いていきました。



どのくらい歩いたのでしょうか。
ふもとのひあたりの良い場所についた時、少女は
あっとおどろきの声をあげました。
何百年もの間、おおぜいの人が探してもみつける
ことができなかった黄金色の花が、どて一面に咲
いているではありませんか。



それも一本や二本ではありません。
そこには百本、いや千本、二千本・・・、数えき
れないくらいの黄金色の花が咲いていたのです。
黄金色の花は、太陽にあたり、きらきらと輝いて
いました。
「なんてきれいな花だろう」
少女は黄金色の花にみとれていました。



すると、また声が聞こえました。
「少女よ、長い間、本当によくがんばったのー。
目の前の黄金色の花は、おまえが咲かせた花じゃ。
兄を思うやさしい気持が、この黄金色の花になった
のじゃ。
この花はなんというか知っているか。
福寿草というのじゃ。
おまえが兄にやさしいことばをかけるたびに、一本
ずつここに咲いたのじゃ。



この黄金色の花は、誰にでも見える訳ではないぞ。
心のやさしい人にしか見えないのじゃ。
春になると、おおぜいの人が黄金色の花をさがしに
やってくるが、
誰の目にも見えないのじゃ。
明日兄にも黄金色の花をみせておやり。一本くらい
は兄にも見えるだろうから・・・。
兄も今度こそよくなるだろう。
おまえの苦労ももう少しじゃ。
いつまでも今のやさしい気持を忘れないようにな」


          つづく


童話「守屋山に黄金色の花が咲いた」は、
みほようこの初めての童話集・「風の神
様からのおくりもの」に収録されています。



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話

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