愛犬りゅう「ばいばい、またね」


  「プロローグ」


ぼく、柴犬のりゅう。
この世を去ってから、早いものでもう四年半になる。
ぼくは「わんわん」としかいえなかったけれど、た
まに「あー・ちゃん」といえたんだよ。



「あーちゃん」って、誰だか知っているかい。
ぼくの飼い主だった、この家のおくさんのことさ。
朝おきると、あーちゃんはぼくにむかって、大きな
声で「お・は・よ・う」って、いうんだ。
それは十五年と三ヶ月続いた。



何千回も「おはよう」ということばを聞いていれば、
そのうちぼくが「お・は・よ・う」っていえるよう
になると、信じていたらしい。
犬がことばをしゃべれるはずはないのに・・・ね。
変なあーちゃん。
あーちゃんと過ごした十五年と三ヶ月、本当にたの
しかったなぁ。


         つづく