愛犬りゅう「ばいばい、またね」


   愛犬りゅう「ばいばい、またね」10


「お留守番」というのは、あーちゃんがいなくな
ることなのだということが、よくわかった。
その後、「お留守番」ということばを聞くと、
「ああ、また一人になるのかと」と思い、さみし
かった。
でも、あーちゃんだって、用事があってでかけて
いくのだからしかたがないね。



十二月末のある朝。
「りゅうに・・・を飲ませたいけれど、どうやっ
て飲ませたら良いかしら?」
「りゅうの好きなハムかちくわの中へ入れたらど
うだろう。知らずに飲みこんでしまうと思うよ」
「でも・・・りゅうは鼻がよいからね。うまくい
くかしら」
「うまくいくさ」
台所で、あーちゃんとこうちゃんが、なにかひそ
ひそと話をしていた。



耳の良いぼくにも、「・・・」の部分は聞こえな
かった。
「・・・」を飲ませるっていったけれど、何を飲
ませてくれるのだろう?
「ハム」「ちくわ」ということばが、耳に残った。
「大好きなハムとちくわを、ごはんの中に入れて
くれるのかな」
単純なぼくは、そう思った。



「りゅう、ハムをあげるから、おいで」
十時頃、あーちゃんが大声でぼくをよんだ。
ぼくはあわてて小屋から飛び出し、あーちゃんの
そばへいった。
「あっ、大好きなハムのにおいがする。うれしいな」
ぼくは「おすわり」といわれる前に、ぎょうぎよく
あーちゃんの前にすわった。



「あら?今日はちゃんとおすわりができるのね。え
らいね。大好きなハムを食べる時は、ちがうね」
あーちゃんがうれしそうにいった。
その時、どこからか今までかいだことのないにおい
がしてきた。
「何のにおいだろう?」
一瞬、そう思った。
しかし、そんなことはすぐ忘れてしまった。


       つづく