愛犬りゅう「ばいばい、またね」


愛犬りゅう「ばいばい、またね」21


しばらくしたら、あーちゃんが外へでてきた。
「りゅう、昨日拾ってきた新しいボールで、ボー
ルなげしようよ」
「新しいボールで?」
「そう、新しいボールで遊ぼう」
「このボールはね、ぼくのおきにいりなの。あー
ちゃん、古いボールで遊ぼうよ」



「だめ、だめ。せっかく新しいボールを拾ったの
だから、このボールでなくちゃあ。りゅう、新し
いボールは気持が良いよ」
「ねえ、あーちゃん、またこのボールとりあげた
りしない?」
「そんなことするわけないじゃん」
あーちゃんはにっこりしながらいった。



「数ヶ月前、ぼくのボールをとりあげたくせに・・・」
あーちゃんは、あの日のことをもう忘れてしまっ
たのだろうか?
「まあ、今日はあーちゃんのことばを信じよう」
・・・というわけで、ボールなげが始まった。



あーちゃんがころがしたボールを、ぼくが拾って、
それをあーちゃんに届ける。
そんなことを、50回ぐらいして遊んだ。
「りゅう、疲れたからもうやめようよ」
あーちゃんがいった。
「もう一回」
「じゃあ、もう一回だけだよ」
ぼくはボールを拾ってきて、「ねえ、もう一回しよ
うよ」と、甘えた。



それから十回以上しただろうか。
さすがにぼくも疲れてきた。
「今日はこれでやめよう」
そう思って、あーちゃんのそばへかけよった。
すると・・・。
ぼくが落としたボールを、あーちゃんがさっともち
あげた。その瞬間、「あっ、またボールをとられて
しまう」と思った。



ぼくは、そのボールをとりかえそうと、大きな口を
あけた。
「がぶり!!」
ぼくはボールにかみついた。
「痛い!!」
突然、あーちゃんの悲鳴が聞こえた。


     つづく