白駒の池


    白駒の池4


「さあ、おじょうさま。出発しよう」
馬小屋についた時、清太がいいました。
「清太さん。きよってよんで」
「じゃあ、きよさま。白駒の背に乗ってくださ
いな」
「清太さん。それでは、だめ」
「使用人のおらが、おじょうさまのことを、き
よちゃんなんてよんでいいの?」
「いいわ。二人だけの時は、きよちゃんってよ
んでね」
「はい、わかりました。きよちゃん」
そんな清太を、きよはうれしそうにみています。



「さあ、白駒。出発するぞ」
清太は、白駒に声をかけました。
「清太さんは、白駒が好きなのね」
「おらは、白駒が大好き。白駒も、おらを好き
だと思うよ。ねえ、白駒?」
白駒は、「私も清太さんが大好き」というよう
に、「ひひーん」となきました。



「私、清太さんと一緒に、馬にのっている時が、
一番幸せ」
「おらも。きよちゃんといっしょに馬にのって
いる時が、一番幸せだよ」
夢中で話をしているうちに、高原へつきました。



高原には、あちこちに赤褐色の花が咲いています。
「清太さん。これが座禅草の花なの?」
「そうだよ。きよちゃん。おもしろい形をしてい
るだろ。座禅草の花は、小さなお堂の中で、坊さ
んが座禅をくんでいるような花だといわれている」
「よくみると、そんな感じね。あら、ここには、五
つも花が咲いているわ。坊さんたちが集まって話し
合いをしているみたいね」


       つづく


「白駒の池」は、信州の佐久地方につたわっている
「白駒の池」をヒントにして、みほようこが書いた
物語。