白駒の池


     白駒の池15


「おれ、長者のお使いで、何度も次郎さんの家へ
いった。おばさんもいいかただし、次郎さんもや
さしそうだし、いい話だと思うけれどね」
「たしかに、次郎さんはやさしい人だわ。でも・・・
次郎さんは、小さな時から、おじさまやおばさまの
いうままなの。だから、うちへきても、とうちゃん
のいうままだと思うわ。私、人のいいなりになって
いる次郎さんを、どうしても好きになれないの」



「次郎さんは、長者の家柄だし、お金もちだし、や
さしいし、きよちゃんの結婚相手として、何の不足
もないと思うけれどね」
「清太さんは、私の結婚相手は、家柄がよくて、お
金もちなら、それでいいの?」
きよが、いつになく強い口調でいいました。



「私は、びんぼうでもいい。健康で、心の清い、自分
の考えをしっかりもっている人と結婚したい。そりゃ
あ、お金はあったほうがいいけれど、二人でまじめに
働けば、食べていけると思うわ。私、次郎さんと結婚
したくないの。次郎さんが、わが家をついでくれると
いうなら、私はよそへとついでも良いと思っているわ」
清太は、何もいえずきよの話をだまって聞いていました。


つづく



信州の佐久には、「白駒の池」という美しい湖があり
ます。その湖には、悲しい伝説があります。


「白駒の池」は、その伝説をヒントにしてみほようこ
が書いた物語です。