女神さまとの約束28
「女神さまも、毎日この木の実を食べていますよ。
でも、名前はしりません」
白駒も、木の実の名前は知らないようでした。
それから、十年がすぎました。
硫黄岳での生活は、夏は涼しく快適でした。
夏の間は、白駒の背に乗って、硫黄岳を散歩します。
ふくは、駒草やウルップ草などの花をみるのを楽し
みにしていました。
でも、冬は寒さがきびしく、雪が何メートルも積も
ります。雪は五月ころまでとけません。部屋の中は
あたたかでしたが、半年間は毎日白い雪をみてくら
さなくてはなりません。
ふくは、険しい岩場の生活に、だんだんあきてきま
した。病人をすくうことにも、むなしさを感じるよ
うになっていました。
「女神さまが、ご自分ですくえばよいのに。なぜ私
がすくわなくてはならないの」
こんな気持になることも、たびたびでした。
つづく