ふしぎな鈴「プロローグ」


ふしぎな鈴「プロローグ」


小高い丘に登ると、目の前に南アルプスの山々が
美しくみえます。
山深いこの町にも、ようやくあたたかな春がやっ
てきました。丘の上の桜が、今年も美しく咲きま
した。



かなは丘へ着くと、桜の木の方へ走って行きまし
た。そして、ポケットから桜の鈴をとりだし、静
かに鈴をふりました。
「リーン・リーン・リーン・・・」
澄んだ音色が、あたりにひびきわたります。



「かなさん、ありがとう。今年も忘れずに会いに
きてくれたのね。うれしいわ」
桜の花が、笑顔でかなを迎えました。
「今年もきれいに咲いたのね」
かなはそっと花のにおいをかぎました。桜の花の
良い香りが、あたりにぷーんとただよいました。



おとうさんがなくなった年の春。
かなはおとうさんと一緒に、この丘へ桜の花をみ
にきました。桜の花が美しく咲いていたのを、今
でもはっきりおぼえています。
その時、おとうさんはかなに小桜姫の話をしてく
れました。小桜姫が大切にしていた二つの鈴のお
話です。



「そんな鈴があったら良いなぁ。大好きな小鳥や
花とお話ができるなんて、さぞ楽しいだろうな。
私も小桜姫さまのように小鳥や花とお話をしてみ
たい」
かなはそう思いました。



「ふしぎな鈴」は、みほようこの三冊目の本。
2005年9月、「鳥影社」から発行されました。




ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)

ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)