火とぼし山


    火とぼし山14


「うまいっ」
次郎は、うまそうに酒を飲みました。
「きよちゃん。この酒、温かい。どう
したの」
「私、次郎さんのことを思いながら、
歩いてきたの。それだけよ」
きよは、そういいました。
きよちゃんは、おらのことをこんなに
も思っていてくれる。
次郎は、幸せでした。



「ほんとに仲のいいカップルじゃのぅ。
娘の名前は、きよ。青年の名前は、次
郎というのか。やさしそうな、感じの
いい娘じゃのぅ。
娘のうれしそうな顔。なんてすてきな
笑顔だろう」



娘をみとどけ安心した明神さまは、下
諏訪の奥さんのやしきへいそぎました。
「ただいま。帰ったよ」
「おかえりなさい。遅いから心配して
いたのよ」
奥さんが、ほっとした顔でいいました。


            つづく



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」と
いう悲しい伝説があります。

「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。