火とぼし山


   火とぼし山27


その手は、びっくりするほど熱い
手でした。
「きよちゃん。熱があるんじゃな
い? だいじょうぶ」
次郎が心配して聞きました。



「熱なんてないわ。次郎さん、心
配しないで。
私の手は、いつも熱いの。さあ、冷
めないうちにお酒を飲んで」
きよは、次郎に酒をすすめました。



「うまいっ」
次郎は、こんなおいしい酒を飲ん
だのは、初めてでした。
会うたびに、きよちゃんが持って
くる酒が熱くなっている。
きよの自分に対する思いが、日ご
とに強くなっていることに気づき、
次郎はとまどいました。


              つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100405#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。