火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 22


第三章 湖の氷の上を歩く娘 4


「うまいっ」
次郎は、うまそうに酒を飲みました。
「きよちゃん。この酒、温かい。どうしたの」
「次郎さんのことを思いながら、歩いてきた
の。それだけよ」
きよちゃんは、おらのことをこんなにも思っ
ていてくれる。
次郎は、幸せでした。


「ほんとに仲のいいカップルじゃのぅ。みて
いても、うらやましいくらいじゃ。娘の名前
は、きよ。青年の名前は、次郎というのか。
やさしそうな、感じのいい娘じゃのぅ。娘の
あのうれしそうな顔。なんてすてきな笑顔だ
ろう」
娘をみとどけ安心した明神さまは、下諏訪の
奥さんのやしきへいそぎました。


        つづく