火とぼし山


   火とぼし山28


  第五章 次郎の見合い


一カ月がすぎました。
今日は、次郎と会う日。
きよにとって、この一カ月は、気が遠
くなるほど長い時間でした。
後二十九日、後十五日、後七日・・・と、
きよは次郎に会える日を指おり数えて
待っていました。



「次郎さんに会いたい」
「次郎さんの笑顔がみたい」
きよは、次郎のことばかり考えてすご
しました。



西山に太陽が沈む頃、きよは次郎が住
んでいる村に向かって出発しました。
「今日は、次郎さんに会える」
そう思うと、心がはずみます。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。