火とぼし山74
「きよ。火がどうしたのじゃ」
「火が南にともっていたの」
「何、火が南にともっていたと。
きよ、それは、ほんとか」
「はい。火が、いつもより南にと
もっていました。
泳ぐ方向を変えようと思ったとた
ん、うずにまきこまれてしまいま
した」
「そうか。やっぱりそうだったのか」
「やっぱりって、どういうこと」
「次郎は、わざと別の場所で火を
たいたのじゃ」
「わざと?」
「そう。次郎は、いつもとちがう
場所で、火をたいたのじゃ」
つづく
昨日の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100522#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1
信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。