火とぼし山


   火とぼし山65


あたりがだんだん暗くなってきま
した。
月は、まだでていません。
きよは、暗闇の中を、向こう岸に
むかって泳いでいきました。



しばらくすると、西山にぽっと小
さな火がともりました。
「あっ、次郎さんだ。今日も火を
たいてくれたのね。ありがとう」
きよは、西山にともった小さな火
をみて、ほっとしました。



しかし、何か変でした。
今日の火は、少し南によっている
ような気がする。
気のせいかしら。



次郎さんがともしてくれた火だも
の、まちがいない。
あの火を目印に、泳いでいこう。
きよは、次郎がともしてくれた火
をめがけて泳いでいきました。
 

           つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100513#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。