開善寺の早梅の精


   開善寺の早梅の精 8


すると、女の人は、にっこりほほ
えみました。
文次は、即興で歌をよみました。


 ひびきゆく鐘の声さへ匂ふらん

 梅咲く寺の入り相の鐘



「この寺では、鐘の音までも、梅
の香りに満ちている」、こんな意
味の歌でした。
すると、女の人は軽く会釈をして、
歌を返してきました。



  ながむれば知らぬ昔の匂ひまで

  おもかげ残る庭の梅が枝


         つづく