童話「笛の音よ、永久にひびけ」


童話「笛の音よ、永久にひびけ」3


「えーい、めんどうだ。あの木もこの木も、みんな切
ってしまえー」
風にのって、人間たちの声が聞こえてきました。その
声は、なげやりでらんぼうな声でした。
「仲間の木が、切られてしまうのだな」
楓は、さみしく思いました。
「まさか、丘の上のわしの所まではこまい」
楓は、安心していました。



ところが・・・。
人間たちが、丘の上までやってきたのです。
「大きな楓だねぇ」
「こんな楓は、みたことがない」
「しかし、楓だけ残しておくわけにもいくまい」
「どうしたら良いだろう」
「切るよりしかたがないだろう」            
こんな声が聞こえてきました。
楓も、仲間の木といっしょに、切られてしまうことに
なったのです。



この丘での楽しかった思い出が、まるで昨日のことの
ように、楓にはなつかしく思い出されました。
「とうとう、わしも切られてしまうのか」
楓は、さみしく思いました。
「人間たちは、なぜ森の木を切るのだろう。森では、
木や草や動物たちが、仲良く助け合って暮らしている
のに」
楓は、大きなため息をつきました。



「この丘に住んでいる仲間たちは、これからどうなる
のだろう」
楓は、仲間たちのことが心配でたまりません。
「うわさでは、この森でスキー大会が行われるとか。
その会場を作るために、森の木をたくさん切るそうだ。
なぜ人間たちは私たちをみごろしにするのだろうか」
楓には、人間の気持がわかりませんでした。


                    つづく


童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、みほようこ
四冊目の童話集・「ライオンめざめる」に収録されます。


「ライオンめざめる」は、来月末(九月末)に、
http://www.choeisha.com/
から、発行される予定です。



     収録される童話


  ・ ライオンめざめる

  ・ 笛の音よ、永久にひびけ

  ・ かきつばたになった少女




   今までに発行された「みほようこ」の本



     風の神様からのおくりもの―諏訪の童話




    竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)




    ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)