童話「笛の音よ、永久にひびけ」


    童話「笛の音よ、永久にひびけ」7


「笛を作りたいのですが、楓の木をゆずっていただ
けませんか」
若者は、責任者の人にたのみました。
「楓の木で、笛ができるのですか?」
「ええ、できますよ。きっと、素晴らしい音色のす
る笛ができると思いますよ」
若者は、そう答えました。 



「丘の上の楓の木が、笛になるなんてうれしいね」
それを聞いた村の人々は、大喜びでした。
「一日も早く、すてきな音色のする笛ができると良
いね」
「楓の笛って、どんな音色がするのだろう」
こどもたちも、笛ができあがるのを楽しみにしてい
ます。村の人たちも、若者に協力して、笛を作るこ
とになりました。
若者と村の人たちは、何ヶ月もかけて、笛を作りま
した。



しかし、何本笛を作っても、なぜかもの悲しい淋し
い音しかでませんでした。
「楓の木では、良い音がでないのだろうか。いや、
そんなはずはない。心ならずも切りたおされた楓の
ためにも、素晴らしい音色のする笛を作りたい」
若者は、心に強く思いました。
若者と村の人たちは、何本も何本も、笛を作り続け
ました。しかし、澄んだ音色のする笛はできません
でした。


   つづく


童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、みほようこ
四冊目の童話集・「ライオンめざめる」に収録され
ます。


「ライオンめざめる」は、今月末(九月末)に、
http://www.choeisha.com/
から、発行される予定です。



     収録される童話


  ・ ライオンめざめる

  ・ 笛の音よ、永久にひびけ

  ・ かきつばたになった少女