愛犬りゅう「ばいばい、またね」


  愛犬りゅう「ばいばい、またね」13


ぼくの「わん」という声を聞いて、あーちゃん
が二階からとびおりてきた。
「りゅう、やっとわんと鳴けるようになったのね。
りゅうはわんと鳴けないのではないかと心配して
いたのよ」
そういって、あーちゃんはやさしくぼくの頭をな
ぜてくれた。



ぼくは得意になって、「わん、わん」と何度も鳴
いた。そうしたら、「やたらに鳴いては駄目よ」と、
あーちゃんにきつくしかられた。
ぼくは他の人にはあまりなかなかった。
でも・・・ガス屋のおじさんが来ると、いつも鳴い
た。そのたびに、ぼくはあーちゃんにしかられた。
ガス屋のおじさんの顔を見ると、台所をのぞいてい
た姿を思い出すのだからしかたがない。
ガス屋のおじさん、ごめんなさい・・・。



生後二ヶ月半頃のことだった。
ぼくはトイレに行きたくなった。
いつものくせで、「くぅーん・くぅーん」と、ないた。
すると、あーちゃんが台所の窓から顔をだした。
今日はあーちゃんがトイレにつれていってくれるみた
い。あーちゃんは、ぼくを楓の木の下へつれていって
くれた。



「りゅう、ちょっと待っていてね。今ガスの火をとめ
てくるから・・・。逃げてはだめよ!!」
そういって、あーちゃんは楓の枝にひもをひっかけて、
台所へもどっていった。
ぼくは良い子で待っていた。
ところが、あーちゃんはなかなか帰ってこない。
「あーちゃんは何をしているのだろう?」
ぼくは逃げるつもりはなかった。



ハプニングがおきたのだ。
ぐっとひもを強くひっぱったら、ひもが枝からぬけて
しまったのだ。
「どうしよう・・・」


                        つづく