白駒の池


     白駒の池2


「清太さん、おねがい。
二人だけの時は、おじょうさまなんてよばないで。
きよって、よんで」
「おらは、長者の家の手伝いをしている使用人だ。
おじょうさまのことを、きよなんてよびすてにはで
きない」
「清太さん。何いっているの。たしかに、私は、佐
久の里の長者の娘よ。みんなから、長者のおじょう
さまっていわれているわ。でも、私は、おじょうさ
まということばが、大きらい。私は、みんなと同じ
ように、きよとよんでほしいの」



「それはそうだけど・・・」
「私は、清太さんのことを、うちの使用人だなんて
思ったことは、一度もないわ。私は、清太さんのこ
とを、ほんとうの兄ちゃんだと思っているわ」
「おじょうさまの気持はうれしいけれど、おらはこ
の家の使用人だから・・・ね」
貧しい家に育った清太は、さみしそうにいいました。



清太は、十三才。
心のやさしい、利口な少年でした。
長者の一人娘・きよは、三つ年下の十才。
清太は、長者の家で、馬の世話をしています。
長者の家では、何頭もの馬をかっていました。
その中に、雪のように白い馬がいます。
長者のじまんの馬でした。


      つづく