白駒の池


     白駒の池17


一枚目の花びらが、ゆっくり開いていきます。
レモン色の美しい花びらでした。
「清太さん。花びらが開いてきたわ。ゆうす
げの花って、いい香りがするのね」
きよは、花の香りを楽しんでいます。
続いて、二枚目・三枚目・・・と、花びらが
開いていきます。



そして、今、最後の六枚目の花びらが開こうと
しています。
「清太さん。最後の花びらが開くわ」
きよが、うれしそうにいいました。
夕やみの中で、レモン色の花だけがくっきりう
かびあがってみえます。
「ゆうすげの花って、ほんとうにきれいな花ね」
きよは、うっとりしながらゆうすげの花をみて
います。



清太には、きよがゆうすげの精のように見えま
した。
「おらは、きよちゃんが大好き。でも、きよちゃ
んは、長者のおじょうさま。おらは、長者の使用
人。どんなにきよちゃんが好きでも、おらはきよ
ちゃんと結婚することはできない」
清太は、自分の心に強くいいきかせるのでした。



 二人は、時のたつのも忘れ、ゆうすげの花をみ
ていました。
「きよちゃん。ぼつぼつ、家に帰ろう。長者が心
配しているよ」
「清太さん。今夜はゆうすげの花をみることがで
きて、うれしかったわ。ありがとう」
「こちらこそ。きよちゃん、ありがとう」
清太は、にっこりしながらいいました。


   つづく