白駒の池


     白駒の池18


気がつくと、空にはまんまるの月がでていました。
星もきらきら輝いています。用意してきたちょう
ちんも必要ないほどの明るさでした。
きよと清太は、白駒の背にのり、家にいそぎました。



「とうちゃん。ただいま」
「きよ、おかえり。遅いから心配していたのだよ」
長者が、ほっとした顔でいいました。
「とうちゃん。ゆうすげの花って、きれいな花ね。
私、ゆうすげの花が咲くのを、時間がたつのもわす
れてみていたの。おそくなってしまって、ごめんな
さい」
「無事に帰ってくれば、それでいいのだよ。清太、
遅くまでごくろうさま。ふろに入って、早くおやす
み」
長者が、清太に声をかけました。



第三章 きよの縁談

      
八月のある日。
「きよ、ちょっと」
「何?とうちゃん」
「きよは、いとこの次郎のことを、どう思っている
んだい?」
「次郎さんは、やさしい人だわ。でも、私は、次郎
さんと結婚する気はありません」
きよは、きっぱりいいました。



「なぜだい?」
「次郎さんは、おじさまやおばさまのいうままで、
自分の考えを持っていない。私、人のいうままにな
っている次郎さんを、好きになれないの。それに、
次郎さんは、なんだかたよりないし」


        つづく