火とぼし山


   火とぼし山28


「きよちゃん。遠い所をご苦労さま。
待っていたよ」
次郎は、笑顔できよを迎えてくれま
した。
「私は、次郎さんの笑顔をみるだけ
で幸せ」
きよは、心の中でそっとつぶやきま
した。



「次郎さん。いつものお酒よ」
「きよちゃん。このとっくり、どう
したの。すごく熱い」
「いつものように、手で温めてきた
だけよ」



きよはそういったけれど、手で温め
てきただけで、こんなに熱くなるも
のだろうかと、次郎は疑問に思いま
した。



「きよちゃんの手は、温かいんだね。
ちょっとさわっていい」
「どうぞ」
きよは、手をさしだしました。


         つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100404#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。