火とぼし山


   火とぼし山80


手長と足長が、うずの中からおまえ
を助けてくれた。
おまえは、このやしきで、三日間眠
り続けたのじゃ」



「私は、うずにまきこまれたことも、
助けていただいたことも、何もおぼ
えていません」
「そうか。おぼえていないのか」
「ええ、何もおぼえていません」



きよは強いショックを受け、すべて
の記憶がなくなっているようでした。
記憶がないまま、生まれ育った諏訪
で暮らすのもつらかろう。
きよが生きていることを知ったら、
次郎がまた何かするかもしれないし。


            つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100528#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。