ライオンめざめる

昨日に続いて、「ライオンめざめる」を紹介し
ます。


    「ライオンめざめる2」


「私も最初はそう思ったわ。金でできているライオン
が、うなるはずはないって。でも、何度もうなり声を
聞いているうちに、このロケットの中に、だれかがと
じこめられているのではないかと思うようになったの」
「そんなばかな・・・。とうちゃんは、かなのいうこ
とを信じたい。でも、この話だけは、信じることがで
きないね」
おとうさんは、困ったような顔をしました。




さわやかな秋になりました。
かなとりゅうは、高原の小高い丘へ登りました。
りゅうは散歩が大好き。
かなの顔をみると、「散歩に行こう。ねえ、かな
さん。散歩に行こうよぉ」と、大声でさいそくし
ます。
かなはライオンのロケットを首にかけ、散歩に行
きました。 丘へつくと、夏の間美しく咲いてい
た日光きすげややなぎらんは、すっかり枯れてい
ました。そして、草原は一面すすきでおおわれて
いました。




松虫草の花は、まだ咲いているかしら」
かなは、松虫草の花を探して歩きました。
あちこち探しましたが、松虫草の花はなかなかみ
つかりません。
松虫草の花は、もう枯れてしまったのかしら」
かなは、あきらめて家に帰ろうと思いました。
ふと足元をみると、枯草の中に、松虫草の花が十本
くらい咲いていました。
松虫草の花は、秋の日をあび、きらっきらっと美しく
輝いています。
「なんてきれいだろう」
かなは、松虫草の花に見とれていました。



すると・・・。
花のみつをすいにきたのでしょうか。
どこからか、赤いちょうが一匹舞ってきました。
みたことのないちょうです。
松虫草の花の上で、ちょうが大きく羽をひろげた時、
かなは「あっ」と驚きの声をあげました。

そのちょうは、くじゃくの羽のような、鮮やかな色
をした赤いちょうでした。
ちょうの羽には、大きな目玉のようにみえるもよう
がついています。ちょうをじっとみていると、かな
は誰かにみつめられているような気がしました。




しばらくすると、あっちの方から一匹、こっちの方
から一匹と、たくさんのちょうが、松虫草のまわり
に集まってきました。
ちょうの数は何百匹、いや何千匹でしょうか。
集まってきたちょうたちは、かなとりゅうのまわり
を、楽しそうにひらひらと舞い始めました。
誰がふいているのでしょうか。
どこからか清らかな笛の音も聞こえてきます。ちょ
うたちは、その笛の音にあわせ、楽しそうに舞って
います。



「うーん・・・うーん・・・」
ライオンのうなり声で、かなははっとわれにかえり
ました。 
あんなにたくさんいた赤いちょうは、どこをさがし
ても一匹もいませんでした。
「赤いちょうは、どこへ消えてしまったのかしら」
かなは、ふしぎに思いました。
みると、松虫草の花が、何事もなかったかのように、
風でゆれています。
「いたいよぉー・・・いたいよ・・・」
ライオンが、またないています。
かなは、いつものように、ロケットをやさしくなで
てあげました。



「うー、わん、わん」


つづく



「ライオンめざめる」は、
今年http://www.choeisha.com/
から発行される「風の神様からのおくりもの4」
に収録される予定。



みほようこの「風の神様からのおくりもの」シリーズ



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話

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竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

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ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)

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