童話「かきつばたになった少女」


童話「かきつばたになった少女」3


かきつばたは、一人で霧が峰へ行こうと思いま
した。大好きなおばさまに、きすげの花をプレ
ゼントしようと思ったのです。
おばさまは、おとうさんの妹。心のやさしい美
しい人でした。
でも、おばさまは独身でした。
すてきなおばさまなのに、なぜ結婚しないのだ
ろう」
かきつばたは、ふしぎに思っていました。



おばさまは、かきつばたを自分のこどものよう
にかわいがってくれます。
そのおばさまが病気になり、何ヶ月も床につい
たままでした。
「おばさま、早く元気になってくださいね」
かきつばたは、毎日おばさまのみまいに行きます。
「かきつばた、おみまいありがとう。残念だけれ
ど、私は後わずかしか生きられないわ。霧が峰
は、もうきすげの花が咲いているかしら」
「きれいに咲いているでしょうね」
かきつばたは、黄橙色のきすげの花をおもいうか
べながらいいました。



「かきつばた、きすげの花はね、私が少女だった
ころ、大好きだった人から、初めてもらった花なの。
その人は、ふもとの村に住んでいる人間の少年だっ
た。私は、その少年と何度も霧が峰へ行ったわ。
とても楽しかった。なくなる前に、もう一度きすげ
の花がみたいわ」
おばさまは、遠い昔をなつかしむように、そういい
ました。



おばさまの話を聞いたかきつばたは、なんとかして
おばさまの最後の願いをかなえてあげたいと思いま
した。


                       つづく



童話「かきつばたになった少女」は、今年
http://www.choeisha.com/から
発行される、みほようこの四冊目の童話集・「ラ
イオンめざめる」に収録されます。



童話集「ライオンめざめる」は、「風の神様から
のおくりもの」シリーズ4。
今、本を製作中。
九月までには、本ができる予定です。



    今までに発行されたみほようこの本



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話




竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)




ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)