2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

九輪草

「花のほほえみ」より 九輪草

火とぼし山

火とぼし山65 あたりがだんだん暗くなってきま した。 月は、まだでていません。 きよは、暗闇の中を、向こう岸に むかって泳いでいきました。 しばらくすると、西山にぽっと小 さな火がともりました。 「あっ、次郎さんだ。今日も火を たいてくれたのね。…

火とぼし山

火とぼし山64 「私と次郎さんは、これからどう なるのだろう。 いつか次郎さんと別れる日がくる のだろうか」 きよは、不安な気持で、毎日を過 ごしました。 第七章 新しい出発 九月八日。 残暑のきびしい日でした。 今日は、次郎と会う日。 「とうちゃん…

九輪草

「花のほほえみ」より 九輪草

火とぼし山

火とぼし山63 「次郎さんのうそつき。 次郎さんの心の中には、その人が 住んでいるのに、なぜそんなこと をいうの」 きよは、心の中でさけびました。 その日、きよと次郎は、きまずい ままで別れました。 こんな別れ方をしたのは、初めて でした。 私は、…

おだまき

「花のほほえみ」より おだまき

火とぼし山

火とぼし山62 「きよちゃん。なぜわかるの?」 「次郎さんが、大好きだからよ。 だから、わかるの。 次郎さんには、その人と会う気は ないかもしれない。 でも、その人、次郎さんが働いて いるたんぼや畑へ、会いにくるで しょ」 次郎は、何もいえませんで…

おだまきつぼみ

「花のほほえみ」より おだまきつぼみ

火とぼし山

火とぼし山61 次郎は、はっとしました。 「おれが、うそつき?」 大好きなきよから、うそつきとい われ、次郎はショックでした。 「次郎さん。うそつきなんていっ て、ごめんね。 でも、次郎さんは、ほんとのこと をいっていない」 「きよちゃん。おれ、う…

九輪草

「花のほほえみ」より 九輪草

火とぼし山

火とぼし山60 「きよちゃん。今、野良の仕事が 忙しい。だから、無理だよ」 「そんなことをいって、次郎さん は私と会うのがいやになったんじ ゃないの」 きよが、さみしそうにいいました。 「考えすぎだよ」 「じゃあ、見合いをした人と会う ため」 「そ…

九輪草

「花のほほえみ」より 九輪草

火とぼし山

火とぼし山59 そのため、きよの話を聞いていま せんでした。 「次郎さん。ぼんやりして、どう したの。具合でも悪いの」 きよが、心配して聞きました。 「いや、なんでもない」 次郎が、ぼそっといいました。 その夜、きよは一人でしゃべって いました。 …

君子蘭黄色

「花のほほえみ」より 君子蘭黄色

火とぼし山

火とぼし山58 そういえば、きよちゃんが持って くるとっくりは、驚くほど熱い。 きよちゃんの手は、たしかに熱い けれど、あのとっくりの熱さは異 常だ。 次郎の心の中で、きよに対する疑 いがどんどんふくらんでいきました。 その一方で、次郎は思いまし…

白しゃくなげ

「花のほほえみ」より 白しゃくなげ

火とぼし山

火とぼし山57 「きよちゃんが、魚に? そんなばかな」 そういって、次郎はだまってしま いました。 「今夜は、きよちゃんの話につい ていけない」 次郎は、心の中でそっとつぶやき ました。 きよちゃんが、いくら泳ぎが達者 でも、こんなに早く湖を泳いで…

火とぼし山

火とぼし山56 「きよちゃんは、いつもそんなふ うに祈っているの」 「祈っているわ。次郎さんのこと も、元気で暮らせますようにと、毎 日祈っている」 きよのことばを聞き、次郎は思い ました。 おらは、暗い夜道を、何時間もか けて訪ねてくるきよちゃん…

火とぼし山

火とぼし山55 会うたびに、十分二十分と、早く なっていったのです。 「きよちゃん。今夜は、ずいぶん 早かったね。 いつもより早く家をでたの」 ふしぎに思い、次郎が聞きました。 「いつもと同じ時間よ」 きよは、そういいました。 でも、いつもと同じ時…

君子蘭黄色

「花のほほえみ」より 君子蘭黄色

火とぼし山

火とぼし山54 「次郎さん、魚よ」 「魚?」 「泳いでいる途中、つかまえたの。 後で焼いて食べよう」 きよは、次郎に魚をわたしました。 「きよちゃん。早く髪をかわかさ ないと、かぜをひくよ」 次郎は、自分のてぬぐいを、きよ にわたしました。 きよは…

むらさきけまん

「花のほほえみ」より むらさきけまん

火とぼし山

火とぼし山53 「だいじょうぶ、次郎さん。 気をつけて泳ぐから。 今夜は明るかったから、泳ぎやす かったわ。 湖の水がきらきら光って、とても きれいだった」 きよがいいました。 「きよちゃん。いくら明るくても、 昼間とはちがうんだよ」 「たとえ真っ…

桜草

「花のほほえみ」より 桜草

火とぼし山

火とぼし山52 「次郎さん、こんばんは」 「きよちゃん。今夜は、ずいぶん 早かったね。どうしたの」 「私、湖を泳いできたの」 「えっ、湖を?」 次郎は、驚いて聞きました。 みると、きよの髪から、しずくが ぽたぽたとたれています。 「私、一分でも早く…