童話

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「わん」となけたよ!! 4 おじさんはあーちゃんに用事がなかったのだろうか? ぼくの「わん」という声を聞いて、あーちゃんが二階 からとびおりてきた。 「りゅう、やっとわんと鳴けるようになったのね。りゅう はわ…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「わん」となけたよ!! 3 「おじさんは何をしているのだろう?早くあーちゃん に知らせなくては・・・」 ぼくはあせった。 「わっ」 「わぁっ」 「わっー」 「わん」となきたいけれど、うまく「わん」と鳴けない。 …

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「わん」となけたよ!! 1 ぼくが「わん」と鳴いたのは、生後何ヶ月頃だったの だろうか? ほかの犬に比べると、遅かったような気がする。 あーちゃんの家には、こどもがいなかったので、ぼく がこどものようなものだ…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「大好きなハムの中に薬が・・・」 5 何がうまくいったのだろうか? まあ、いいか。大好きなハムを食べることができたの だから・・・。 その夜。 「今日、りゅうに・・・を飲ませたの。ハムの中へおしこ んで飲ませ…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「大好きなハムの中に薬が・・・」 4 「何のにおいだろう?」 一瞬、そう思った。 しかし、そんなことはすぐ忘れてしまった。 大好きなハムを目の前にして、ぼくはわくわくして いた。 そして、あーちゃんがさしだした…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「大好きなハムの中に薬が・・・」 3 「りゅう、ハムをあげるから、おいで」 十時頃、あーちゃんが大声でぼくをよんだ。 ぼくはあわてて小屋から飛び出し、あーちゃんのそ ばへいった。 「あっ、大好きなハムのにおい…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「大好きなハムの中に薬が・・・」 2 「でも・・・りゅうは鼻がいいからね。うまくいくかしら」 「うまくいくさ」 台所で、あーちゃんとこうちゃんが、なにかひそひそ と話をしている。 耳のいいぼくにも、「・・・」…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「空から白いものが降ってきた。何だろう?」 6 「お留守番」というのは、あーちゃんがいなくなること なのだということをぼくは知った。 その後、「お留守番」ということばを聞くと、「ああ、ま た一人になるのかと…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「空から白いものが降ってきた。何だろう?」 5 ぼくはこうちゃんにとびついた。 こうちゃんは、ぬれた体をタオルでふいてくれた。 そして、ぼくを家の中へ入れてくれた。 しばらくこうちゃんと遊んでいたが、疲れて…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「空から白いものが降ってきた。何だろう?」 4 夕方になり、だんだん暗くなってきた。 ぼくは心細くなって、「くぅーんくぅーん」と、大声でな いた。 しかし、となりに住んでいるおじいちゃんもおばあち ゃんも、き…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「空から白いものが降ってきた。何だろう?」 3 「だれか、助けて!!」 ぼくはひっしで助けをもとめた。 しかし、だれも助けにきてくれなかった。 となりにこうちゃんの両親が住んでいるが、二人とも 犬は大きらい。…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「空から白いものが降ってきた。何だろう?」 2 あーちゃんは「お留守番」といったけれど、お留守 番て何だろう? でも、ぼくにはわからなかった。 しかし、いつもと様子がちがうことは、なんとなくわ かった。 午前…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「ぼくはぎっちょ」 3 左手を上手に使って小屋の中へ入るぼくをみて、あ ーちゃんはいった。 「りゅうは、上手に小屋の中へ入るのね。あら? りゅ うって、ぎっちょだったのね。 知らなかったわ」と。 「空から白いも…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「ぼくはぎっちょ」 2 ぼくは、どうやったら小屋の中へ入ることができるか、 いろいろ試してみた。 頭でビニールをおしてみたが、うまく中へ入れない。 おしりでビニールをおしてみたがだめ。 左手で「えいっ」と、ビ…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「温かなカイロをありがとう」 3 その頃、ぼくの妹は、かぜをひいてなくなったらしい。 妹は、たった二ヶ月の命だった。 かわいそうに・・・。 妹もあたたかなカイロを入れてもらっていたら、長生 きできたかもしれな…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「温かなカイロをありがとう」 2 でも・・・ぼくは寒くてたまらなかった。 「りゅうは毛皮をきているから、冬でも寒くないよね」 あーちゃんからそういわれたくなかったので、ぼくは じっとがまんしていたのだ。 でも…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「自分でおしっこをしてね」 4 「自分でしてねって、あーちゃんはいったのにー。じゃ あ、ちゃんとトイレの場所を作ってくれ」 ぼくは「くぅーん」とないて、あーちゃんに抗議した。 その後、あーちゃんはおしっこの…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「自分でおしっこをしてね」 3 「自分でしてね」といわれても、どこへおしっこをした らいいのか、ぼくにはわからない。 うんこは同じ場所でしたが、おしっこは気のむくまま にしていた。 あーちゃんはぼくがあちこち…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「自分でおしっこをしてね」 2 しかし、何の音かぼくにはわからなかった。 「だだーん」という音は、あーちゃんが階段から足を ふみはずした音だと、後で知った。 だから、ぼくのおしっこどころではなかったのだろう…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「自分でおしっこをしてね」 1 ぼくはおしっこやうんこがでたくなると、「くぅーん、くぅ ーん」とないて、あーちゃんにしらせる。 すると、あーちゃんはあわてて二階から飛び降りてくる。 そして、ぼくをトイレにつ…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「さわるな、これはぼくのごはんだ」 3 二週間ぐらいして、ぼくの悪いくせもなおった。 でも、あーちゃんがぼくの食器に手を入れると、弟や 妹にごはんを食べられた時のことを思い出し、つい 「うー」といいたくなる…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「さわるな、これはぼくのごはんだ」 2 だから、ぼくはごはんが運ばれてくると、「これは、ぼ くのごはんだ。おまえたち、手をだすな」って、弟や 妹にいっていたのだ。 今は誰もごはんをとる人はいないのに、習慣っ…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「ぼくの名前は?」 3 「りゅうなんて名前をつけなければ良かった・・・」 ある日、あーちゃんはぼくにむかっていった。 「ねえ、りゅう。ちろとか、まろとかいう名前だったら、 りゅうも大人しい犬になっていたかも…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「ぼくの名前は?」 2 あーちゃんの夫・こうちゃんも「たろ」「ベル」「ちろ」 なんて、やはりいろいろな名前でぼくをよんでいた。 「ぼくの名前は、何なの?」 ぼくは、二人にこうぎした。 何日かして、ぼくの名前は…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「おしっこがでちゃった・・・」 4 「あら、おしっこ・・・」 奥さんはあわててぼくを下へおろした。 そして、雑巾を持ってきて、すばやくふいた。 これが、ぼくとあーちゃんとの初めての出会いだった。 「ぼくの名前…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「おしっこがでちゃった・・・」 3 やさしそうなめがねをかけた人だった。 とてもやさしそうに見えたけれど、本当はきびしい人 だということを、ぼくは後で知った。 車にゆられてきたので、ぼくはおしっこがしたくて…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「おしっこがでちゃった・・・」 2 ぼくは、かわいがってくれた少女に、「ありがとう」と 何度もお礼をいった。 「先生と奥さんに、うんとかわいがってもらうのだよ」 少女はぼくの頭をなでながら、そういった。 十時…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「ぼくの主人は、お茶の先生?」 3 奥さんは「犬の飼いかた」という本を買ってきて、一生 けんめい勉強をしていたという。 「早くその家へ行きたいなぁ」 ぼくはその家へ行く日を、楽しみにして待っていた。 「おしっ…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「ぼくの主人は、お茶の先生?」 2 まあ、いいか。 その家にはこどもがいないというから、ぼくをかわい がってくれるだろう。 でも、その奥さん、ぼくのこと気にいってくれるかな。 昭和五十九年十月三十一日。 ぼく…

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[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「ぼくの主人は、お茶の先生?」 1 「あのね、社会科の先生がね、犬がほしいんだっ て。元気な犬がほしいそうよ。今度生まれる犬の 中で、一番元気のいい犬を先生にあげようと思う の。先生にあげていいかしら」 ある…